ルクレ
2026/10/21時点の情報で作成しています。株価・出来高は10/20終値までで、10/21の値動きは反映していません。凡例は【開示】=目論見書・取引所などの一次資料、【会社計画】=上場時に公表された会社の業績予想、【推計】=筆者の逆算・試算、【第三者】=IPO情報サイト・株価サイトの数字です。金額の単位は特記なき限り百万円です。時価総額・PER・EPSは、特記なき限り発行済9,500,000株ベースで計算しています(理由は4-1)。
エグゼクティブサマリー
| 観点 | 評価 | 要点 |
|---|---|---|
| 成長性 | ○ | 有料ID数は25/9→26/6の9か月で+28.6%、ストック売上比率は30.8%→38.2%。売上はFY32計画で+19.0%、FY33計画で+20.3%【開示】【会社計画】 |
| 収益性 | ○〜△ | 営業利益率はFY31の11.3%から9M 20.0%、Q3単独23.4%へ急改善。ただしQ3の粗利率54.5%(FY31は45.8%)が定着するかは未確認【推計】 |
| 実現確度 | △ | FY33計画は増分営業利益率74%。営業利益1,212を出すには粗利率57〜60%が必要で、実績(Q3 54.5%)の先にある【推計】 |
| 収益の質 | ○ | 契約負債の積み上がりでCFは利益を上回る。有利子負債は僅少。ただし棚卸資産が9か月で+85% |
| バリュエーション | △〜✕ | 1,799円でFY33 PER 21.6倍(9.5M株、会社計画)。会社計画の満額達成+PER22倍でも1,823円【推計】 |
| 需給 | ✕〜△ | オファリングレシオ40.4%、4日で募集・売出し総数の3.98倍が回転。TAKの380万株が2027/4/12に解除される |
| ガバナンス | △ | 創業家(TAK+池田恭子氏)が上場後も約45.7%。従業員47名の少人数経営。関連当事者取引なし |
| 総合 | 現値は追わない | 買い目線は後述。公開価格割れ手前で打診、本格買いは引受価額付近 |
結論: 事業の中身は良く、営業利益率の改善は本物に見えます。ただし1,799円は、FY33の会社計画(営業利益率29%)を満額達成して、PER22倍が付いた値段(1,823円)にほぼ並んでいます。筆者の確率加重の妥当株価は約1,554円で、現値はこれを約16%上回ります。上場から3営業日で22%下げましたが、出来高が細るなかでの安値引けで、底打ちの確認はまだありません。11/13の決算(Q4の粗利率とFY33計画の据置)を見るまで、買うなら公開価格近辺の打診に留め、本格的な買いは1,350〜1,400円まで待つのが合理的と見ます。
前回分析(目論見書ベース)からの変更点
| 項目 | 内容 | 判断への影響 |
|---|---|---|
| 価格・初値 | 公開価格は仮条件上限の1,480円、初値2,030円(+37.2%)、初日終値2,295円(公開価格比+55.1%)【開示】【第三者】 | 価格前提が確定。時価総額は公開価格140.6億円、初値192.8億円、10/20終値170.9億円【推計】 |
| 上場後の値動き | 10/16 −12.85%、10/19 +2.45%、10/20 −12.20%で終値1,799円。10/20は安値引けで、初日安値(1,894円)も10/19安値(1,856円)も割り込んだ【第三者】 | マイナス。出来高は初日から89%減り、買い手の薄さが見える |
| 株数ベース | メディアのPER(公開価格でFY32 24.4倍、FY33 15.2倍)は、自己株式を除く株数で計算されている。自己株式の残り849,000株はSO805,000株の行使に充てられるため、実質の株数は9.5M株に近い【推計】 | マイナス。同じ株価でPERが約2割高く出る。1,799円でFY33は18.4倍ではなく21.6倍 |
| 会社計画の検算 | FY32は営業利益が保守的、純利益は税率次第で未達の可能性。FY33は粗利率57〜60%が必要【推計】 | 計画を満額で織り込む価格は払えない。確率加重で妥当株価を算出 |
| 第三者の事前評価 | IPO基礎講座はD評価(初値予想1,250〜1,650円)、かぶリッジはC評価(1,390〜1,767円)、トレーダーズ・ウェブの初値予想は2,000円【第三者】 | 評価の低い媒体の予想を、実際の初値(2,030円)は上回った |
| 買い目線 | 公開価格基準から現値基準へ更新。打診1,500円前後、本格1,350〜1,400円、積極1,300円以下 | 現値1,799円は「見送り」の帯 |
| 訂正 | 特別利害関係者間の株式移動価格は1株40円(株式分割後ベース)で、公開価格の約1/37。前回「分割前の価格で、分割後は実質0.04円」と説明したのは誤り【開示】 | 取得コストが低い層が多いことは変わらないが、倍率は約37倍(約3.7万倍ではない) |
1. ディール概要【開示】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 市場・上場日 | 東証グロース、2026/10/15 |
| 日程 | 公開価格決定 10/5、申込 10/6〜10/9、上場 10/15、シンジケートカバー期間 10/15〜11/6、OAの払込 11/11 |
| 価格 | 想定価格1,360円 → 仮条件1,390〜1,480円 → 公開価格1,480円(仮条件上限)。引受価額1,361.6円(公開価格の92%) |
| 公募 | 500,000株(自己株式の処分。新株発行ではない) |
| 売出 | 2,840,000株(創業者の池田武史氏。個人保有分の全部) |
| OA | 501,000株(野村證券がTAK株式会社から借株) |
| 総数・吸収金額 | 3,841,000株、56.85億円(公開価格ベース)。オファリングレシオ40.4% |
| 上場時発行済株数 | 9,500,000株(上場前の自己株式1,850,000株。公募・OA後の残りは849,000株)。自己株式を除く流通ベースは、公募後8,150,000株(OA込8,651,000株)【推計】 |
| 潜在株式 | 新株予約権805,000株(行使価格89円、発行済株式の8.5%) |
| 時価総額 | 140.6億円(公開価格)/192.8億円(初値)/170.9億円(10/20終値)【推計】 |
| 手取り概算 | 公募6.8億円+OA 6.8億円=約13.6億円(OA全量行使、諸費用0.04億円控除後)【推計】 |
| 資金使途 | 採用費・人件費4.82億円、AI・システム開発2.83億円、増床2.49億円、販売促進2.34億円(計12.48億円、想定価格ベース)。実際の手取りとの差は約1.1億円 |
| 主幹事 | 野村證券(割当99.1%)、SBI証券(0.9%)【第三者】 |
内訳は、公募13.0%・売出し73.9%・OA 13.0%です。約74%が売出し、約26%が会社の調達です。売出しは創業者個人の現金化、会社の調達分は公募とOAです。売出人が受け取る金額は引受価額ベースで約38.7億円です【推計】。公募が自己株式の処分のため、発行済株数は増えません。一方で、市場に出る株数は7,650,000株から最大8,651,000株に増えます。
大株主(上位)【開示】
| 株主 | 保有株数(うちSO) | 上場前比率 | 売出後の株数 | ロックアップ |
|---|---|---|---|---|
| TAK株式会社(創業者の資産管理会社) | 3,800,000 | 44.94% | 3,800,000 | 180日 |
| 池田武史(創業者、元代表取締役) | 2,840,000 | 33.58% | 0 | ―(全株売出し) |
| 有馬弘進(代表取締役) | 1,000,000(500,000) | 11.82% | 1,000,000 | 180日 |
| 渋谷充宏(取締役) | 200,000(100,000) | 2.36% | 200,000 | 180日 |
| 池田恭子(創業者の親族、元取締役) | 150,000 | 1.77% | 150,000 | 180日 |
| 野村絵里奈(従業員) | 114,000(24,000) | 1.34% | 114,000 | 180日 |
| 東哲(従業員) | 64,000(24,000) | 0.75% | 64,000 | 180日 |
比率の分母は、自己株式を除く7,650,000株とSO805,000株の合計8,455,000株です。VCの保有はありません。上場後の持分(分母は流通ベースのOA込8,651,000株)は、TAKが43.9%、TAKと池田恭子氏の合計が45.7%、有馬氏の実株が5.8%です【推計】。目論見書は、池田氏グループが「上場後は支配株主に該当しなくなる」としています。
2. 財務の正常化
2-1. 実績【開示】
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 純資産 | 営業CF |
|---|---|---|---|---|---|---|
| FY27(21/9) | 1,840 | ― | 185 | 121 | 769 | −11 |
| FY28(22/9) | 1,581 | ― | −240 | −124 | 584 | −221 |
| FY29(23/9) | 1,646 | ― | −126 | −84 | 439 | 138 |
| FY30(24/9) | 2,224 | 78 | 77 | 49 | 428 | 147 |
| FY31(25/9) | 2,920 | 330 | 342 | 226 | 592 | 669 |
| FY32 9M(〜26/6) | 2,473 | 495 | 511 | 316 | 848 | ― |
- FY28・FY29の赤字は、蔵衛門のライセンス販売を買切り型から契約期間にわたって売上を計上するサブスク型に移したことが主因です。その後に黒字化し、FY31は売上+31.2%、営業利益+322%でした。
- FY31の営業CF(669)は純利益(226)の約3倍です。繰延税金資産の取崩し(101.8、非現金)と、契約負債の増加(+212)が効いています。
- FY31の会計上の実効税率は33.8%ですが、繰越欠損金の利用で現金納税(法人税等の当期分)は13.8にとどまりました。繰延税金資産はFY30末117 → FY31末16 → 26/6末約3と使い切りに近く、今後は税金が現金でフルにかかります。利益に対するキャッシュの出方は、FY31ほどは良くなりません【開示】【推計】。
2-2. FY32の四半期逆算【推計】
| 売上 | 粗利率 | 販管費 | 営業利益 | 営業利益率 | 純利益 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| H1(開示) | 1,618.7 | 50.3% | 519.7 | 295.3 | 18.2% | 182.4 |
| 9M(開示) | 2,473.3 | 51.8% | 784.8 | 495.5 | 20.0% | 316.3 |
| Q3単独(9M−H1)【推計】 | 854.5 | 54.5% | 265.2 | 200.2 | 23.4% | 133.9 |
| FY32F(会社計画) | 3,473 | ― | ― | 688 | 19.8% | 464 |
| Q4必要額【推計】 | 999.7(Q3比+17.0%) | ― | ― | 192.5 | 19.3% | 147.7 |
- 粗利率はFY30の44.7%、FY31の45.8%から、H1 50.3%、Q3 54.5%へ上がりました。販管費率も41.2%(FY30)→34.5%(FY31)→31.0%(Q3)と下がっています。販管費の年率換算(1,046)はFY31(1,008)から+3.9%にとどまり、少ない人員で売上だけが伸びています。
- 営業利益は保守的です。 Q4の必要額192.5は、Q3の実績200.2を下回ります。Q3並みを維持できれば、通期の営業利益は688を上回ります。
- 一方でQ4の売上は前四半期比+17%が必要です。成長記録(運動会などの行事写真)の季節性が効くかを、決算で確認する必要があります。
2-3. 税率を補正したFY32純利益【推計】
| Q4の税率 | 通期純利益 | 計画(464)比 |
|---|---|---|
| 33.8%(FY31の実効税率、計画の暗黙の税率) | 442 | −4.8% |
| 38.2%(9Mの実績) | 433 | −6.6% |
Q4の営業利益が計画どおりの192.5だと、純利益は計画に届きません。計画の464を達成するには、税率33.8%でもQ4の経常利益が約223必要です(営業利益ベースの暗黙値189.6を約18%上回る)。Q4の営業利益がQ3並みの200なら、通期純利益は約449(税率33.8%)です。営業利益は上振れても、純利益は計画をわずかに下回る可能性があります。
2-4. 会社計画【会社計画】
| FY31実績 | FY32F | FY33F | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,920 | 3,473(+19.0%) | 4,177(+20.3%) |
| 営業利益 | 330 | 688(19.8%) | 1,212(29.0%、+76.2%) |
| 経常利益 | 342 | 701 | 1,212 |
| 純利益 | 226 | 464 | 792 |
| EPS(会社開示) | 29.55円 | 60.67円 | 97.51円 |
| 配当 | 8円 | 8円 | 24円 |
FY33のEPSは、2026/10/5に91.73円から97.51円に訂正されています【第三者(日本投資機構)】。会社開示のEPSは、純利益から逆算すると約7.65M株(FY32)、約8.12M株(FY33)で割った値です【推計】。
FY33計画の検算【推計】
- 売上の増加分(+704)に対して営業利益が+524で、増分の営業利益率は74.4%です。
- FY32の販管費年率(1,046)が+10〜25%増えると仮定して、営業利益1,212に必要な粗利率は次のとおりです。
| 販管費の増加 | +10% | +15% | +20% | +25% |
|---|---|---|---|---|
| 販管費 | 1,151 | 1,203 | 1,256 | 1,308 |
| 必要な粗利率 | 56.6% | 57.8% | 59.1% | 60.3% |
Q3の粗利率54.5%を上回り続ける必要があります。さらに、資金使途に挙がった追加支出(採用・人件費、AI開発、増床、販促)は、FY33に263、FY34に378、FY35に608と階段状に増えます【開示】。FY33計画がこれをどこまで織り込んでいるかは、目論見書からは分かりません。
2-5. 貸借対照表・キャッシュフロー【開示】
| 項目(2026/6/30) | 値 |
|---|---|
| 総資産 / 純資産 / 自己資本比率 | 2,171 / 848 / 39.0% |
| 現預金 | 1,540 |
| 契約負債(前受金) | 905(FY30末 446 → FY31末 658) |
| 棚卸資産(製品+商品) | 241(FY31末 130) |
| 未払法人税等 | 175 |
- 有利子負債は僅少です(FY31の支払利息は0.07)。IPOの手取り約13.6億円を足した上場後の現預金は約29.0億円で、未払法人税等を引くと27.2億円です。時価総額(10/20終値、9.5M株)の約16%にあたります【推計】。
- 9Mの現預金の増加は431(配当61の支払前では492)で、純利益316を上回ります。差の主因は契約負債の増加(+247)です。前受けが積み上がる成長局面では良い形ですが、成長が鈍ると逆に効きます。EVの計算では、契約負債を債務として控除していません(控除すると正味現金は約18億円)。
- 棚卸資産は9か月で+85%と、売上の伸び(FY32計画+19%)を大きく上回ります。 蔵衛門Pad等の端末とみられますが、新機種に向けた積み増しか、販売見込みの先取りかは、目論見書から読み取れません。
3. ビジネスと競争優位
事業【開示】: 建設・保育教育・自動車整備の「現場の記録業務」を、専用端末・アプリ・クラウド・AIで効率化する記録DXプラットフォームです。1998年に工事写真ソフト「蔵衛門」を発売しました。
| 領域 | 主力 | FY31売上 | 9M売上(構成比) | 収益の性格 |
|---|---|---|---|---|
| 施工記録(建設) | 蔵衛門(Pad、クラウド、プレミアム、御用達、カメラ、SIM) | 2,011(68.9%) | 1,755(70.9%) | フロー(端末・買切り)+ストック(ID課金)。売上の過半、利益の大半 |
| 成長記録(保育・教育) | みんなの写真屋さん(行事写真のオンライン販売) | 904(30.9%) | 710(28.7%) | 都度購入のフロー。全社利益への貢献は限定的 |
| 整備記録(自動車整備) | AITURBO(2026/6開始) | 僅少 | その他 8.6 | 立ち上げ・先行投資フェーズ |
成長エンジンは「蔵衛門プレミアム」(ID単位のサブスク)です。 買切り版ソフト「蔵衛門御用達」の既存顧客をクラウドへ移行させ、同じ会社の中で利用現場・部門を広げる(全社展開)戦略です。端末(蔵衛門Pad)の販売は現場への入口で、売ること自体より、IDにつなげることが目的です。
主要KPI【開示】
| 指標 | 24/9 | 25/9 | 26/3 | 26/6 |
|---|---|---|---|---|
| 有料ID数 | 62,923 | 95,157 | 111,733 | 122,380 |
| 契約社数 | 7,574 | 10,763 | 11,850 | 12,264 |
| 1社あたりID【推計】 | 8.31 | 8.84 | 9.43 | 9.98 |
| ARR | 714.1 | 1,067.7 | ― | ― |
| 解約率(企業単位、月次) | 0.12% | 0.16% | ― | ― |
- IDは25/9→26/6で+28.6%、契約社数は+13.9%です。 伸びの主因は新規の社数より、既存顧客内のID拡大です。
- 純増ペースは、H1が月2,763ID・月181社、Q3が月3,549ID・月138社です【推計】。IDは加速、社数は減速しています。全社展開が進んでいる証拠であると同時に、新規開拓が鈍っている可能性もあります。
- ストック売上は、Q3単独で353.6(売上の41.4%)、年率換算で1,415です。25/9のARR(1,067.7)から約+32%の水準です【推計】。ストック売上÷平均IDは、FY31の11,412円/年からQ3の12,084円/年へ上昇しており、単価は下がっていません【推計】。
- 解約率の低さは強みですが、エンタープライズプランの企業単位・月次平均です。現場単位で終わるパックプランは含まれません。「0.16%」をそのままID単位の継続率とは読めません。
- 成長記録は、YAUが218,481人(+4.0%)、ARPUが4,136円(+57.9%)で、FY31売上は+64.2%でした。少子化で人数が伸びない前提で、ARPUの上昇が続くかが焦点です。継続課金型の「うちの子」等は2026/7に有料化したばかりです。
- 整備記録(AITURBO)は、月間処理台数が2026/6の460台から7月に760台へ増えましたが、売上への寄与は軽微です。
強み:
- 顧客基盤とブランド。 約11万社の導入実績(蔵衛門御用達・プレミアムを導入した会社数、26/6時点)。ただし28年分の累計で、稼働数とは限りません。有料契約12,264社は、その約1割です【推計】。
- 現場への定着。 粉塵・水濡れに耐える専用端末と、国交省の基準に準拠した写真台帳、改ざん検知(写真の真正性)があります。台帳データの蓄積は切り替えコストになります。
- データとAI。 施工写真は約17億枚(2026/8)。約1,500種類の施工記録に自動分類する記録AI(仕分けAI、2025/7搭載)があります。
弱み・リスク:
- 競合は、施工管理クラウド(上場ではスパイダープラス、ほか大手の施工管理SaaS)が写真管理を機能として内包する流れです。写真台帳の無料化・単機能化が価格圧力になる可能性があります【筆者の判断】。
- スマホアプリ「蔵衛門カメラ」(無料)で入口を広げる戦略は、導入障壁を下げる一方で、単価を押し下げる圧力にもなります。
- 従業員47名(臨時68名)。平均年齢32.1歳、平均年収587万円。代表取締役への依存がリスク項目に挙がっています。
- 総じてモートは「中程度」です。ブランド、蓄積データ、切り替えコストが根拠で、実績(IDの伸びと低い解約率)も整合しています。ただし新規社数の純増は減速しています。
4. バリュエーション
4-1. 株数の考え方
メディアが載せるPER(公開価格でFY32 24.4倍、FY33 15.2倍)は、会社開示のEPS(60.67円、97.51円)で計算されています。このEPSの分母は、純利益から逆算すると約7.65M株(FY32)、約8.12M株(FY33)で、自己株式を除いた株数に近い数字です【推計】。
一方、自己株式の残り849,000株は、SO805,000株の行使に充てられるとみるのが自然です。実質の希薄化後株数は発行済9,500,000株にほぼ等しくなります(10/20終値でTSM法をかけると約9.42M株)【推計】。このため本稿は9,500,000株ベースで計算します。同じ株価でもPERは、メディアの数字より約2割高く出ます。
4-2. 株価別の指標【推計】
| 株価 | 時価総額 | EV | PER FY32 | PER FY33 | EV/EBIT FY33 | PSR FY32 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1,480円(公開価格) | 140.6億円 | 113.4億円 | 30.3倍 | 17.8倍 | 9.4倍 | 4.05倍 |
| 2,030円(初値) | 192.8億円 | 165.6億円 | 41.6倍 | 24.3倍 | 13.7倍 | 5.55倍 |
| 2,295円(初日終値) | 218.0億円 | 190.8億円 | 47.0倍 | 27.5倍 | 15.7倍 | 6.28倍 |
| 1,799円(10/20終値) | 170.9億円 | 143.7億円 | 36.8倍 | 21.6倍 | 11.9倍 | 4.92倍 |
FY32・FY33は会社計画(営業利益688・1,212、純利益464・792)です。EV=時価総額−上場後の正味現金27.2億円で、契約負債は控除していません。会社開示のEPSで計算したPERは、1,799円でFY32 29.7倍、FY33 18.4倍です。
4-3. PBRと同業比較
- PBR: 2026/6末の純資産848(BPS 110.78円)で、公開価格13.4倍、1,799円で16.2倍です。IPOの手取りを加えた1株純資産255.1円(流通8.651M株)でも、1,799円で7.1倍です【推計】。
- 同業(スパイダープラス、4192): 10/16終値364円×35,545,900株で時価総額129.4億円。2026年12月期の予想売上59億円(連結)に対してPSR 2.19倍、営業利益率は予想で0.8%程度です【第三者】。ルクレの1,799円はPSR 4.92倍で約2.2倍のプレミアムです。営業利益率20%超とストック比率の上昇で説明できる水準ですが、FY33計画の達成まで織り込めば割安ではありません。スパイダープラスは9/29の305円から10/16の364円へ+19.3%上昇しており、ルクレ上場に連れた面があります【第三者】。
- SOの含み: 805,000株(行使価格89円)の内在価値は、1,799円で約13.8億円(時価総額の8.1%)です。うち有馬氏の500,000株分が約8.6億円。SOの費用計上はありません(「該当事項なし」)。損益には出ませんが、潜在的な売り手になります【推計】。
4-4. FY33営業利益率×PERによる理論株価【推計】
FY33の売上4,177を共通とし、営業利益率だけを変えます。非営業損益はゼロ、実効税率35%(会社計画は約34.7%)、9,500,000株ベースです(円)。
| FY33営業利益率 | 営業利益 | 純利益 | EPS | PER 18倍 | 20倍 | 22倍 | 25倍 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 29%(会社計画) | 1,211 | 787 | 82.9円 | 1,492 | 1,658 | 1,823 | 2,072 |
| 26% | 1,086 | 706 | 74.3円 | 1,338 | 1,486 | 1,635 | 1,858 |
| 24% | 1,002 | 652 | 68.6円 | 1,235 | 1,372 | 1,509 | 1,715 |
| 20% | 835 | 543 | 57.2円 | 1,029 | 1,143 | 1,257 | 1,429 |
1,799円が正当化されるのは「会社計画の満額達成+PER22倍」(1,823円)だけです。 営業利益率が24〜26%にとどまれば、PER22倍でも1,509〜1,635円です。売上が会社計画に届かない場合(FY33売上がFY32会社計画比+15%の3,994)は、営業利益率24%でEPS 65.6円(1,799円でPER 27.4倍)、20%で54.7円(同32.9倍)になります。
4-5. 3シナリオの確率加重【推計・筆者の主観】
「FY33のEPS×1年先PER」で現在の妥当株価を求めます。倍率は、売上+20%前後の成長と上場直後の需給の重さを見て20〜22倍としました。12か月後の目標株価ではありません。
| シナリオ | 確率 | 想定 | 株価 |
|---|---|---|---|
| 会社計画を達成 | 30% | 営業利益率29%、PER22倍 | 1,823円 |
| 一部未達(ベース) | 45% | 営業利益率24〜26%、PER22倍 | 1,509〜1,635円(中央1,572円) |
| 粗利率の戻り・投資負担 | 25% | 営業利益率20%、PER20〜22倍 | 1,143〜1,257円(中央1,200円) |
| 確率加重 | 約1,554円 |
ベースを24〜26%とするのは、FY33計画の達成に必要な粗利率(57〜60%)が現状の実績を超えており、そこに追加投資が重なるためです。Q4の粗利率が55%前後を維持し、決算でFY33計画が据え置かれれば、会社計画の重みを上げます(会社計画50%・ベース35%・悪化15%なら約1,640円)。
5. 需給とオーバーハング
5-1. 上場後の値動きと出来高【第三者】
| 日付 | 始値 | 高値 | 安値 | 終値 | 前日比 | 出来高(株) | 対発行済 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 10/15(初日) | 2,030 | 2,344 | 1,894 | 2,295 | 公開価格比+55.1% | 8,217,100 | 86.5% |
| 10/16 | 2,045 | 2,165 | 1,940 | 2,000 | −12.85% | 4,089,200 | 43.0% |
| 10/19 | 1,910 | 2,118 | 1,856 | 2,049 | +2.45% | 2,084,500 | 21.9% |
| 10/20 | 1,999 | 2,021 | 1,799 | 1,799 | −12.20% | 899,400 | 9.5% |
- 4営業日の累計出来高は15,290,200株で、発行済株式の1.61倍、募集・売出し総数(3,841,000株)の3.98倍です【推計】。公開価格で手に入れた層の回転は、かなり進んだと見られます。
- 出来高は初日から10/20までで89%減りました。回転が一巡して出来高が細るなかでの安値引けは、「売り尽くし」ではなく「買い手の薄さ」と読むのが自然です。出来高を伴う反発(下ヒゲ)が出るまで、底打ちとは見なしません【筆者の判断】。
- 10/20の1,799円から公開価格(1,480円)まで−17.7%、引受価額(1,361.6円)まで−24.3%です【推計】。
5-2. 放出量と配分
- 吸収金額56.85億円で、時価総額(公開価格、9.5M株)の約40%にあたります。オファリングレシオは40.4%、公募比率は13.0%(OAを除くと15.0%)で、グロースの案件としては需給の重い構成です。
- 主幹事の野村證券が99.1%、SBI証券が0.9%(33,400株)です【第三者】。個人投資家の配分は野村に集中しました。
5-3. TAKの残存株とロックアップ【開示】
| 対象 | 期間 | 備考 |
|---|---|---|
| TAK株式会社(3,800,000株)、有馬弘進氏、渋谷充宏氏、池田恭子氏、従業員、SO保有者 | 〜2027/4/12(180日) | 主幹事の裁量で一部または全部を解除できる。価格に応じた解除条件はない |
| 会社 | 〜2027/4/12 | 株式・転換証券の発行を制限(本募集、株式分割、SO、OAに関するものを除く) |
- TAKの3,800,000株は、今回の募集・売出し総数(3,841,000株)とほぼ同じ(0.99倍)です。 10/20の株価で約68億円です【推計】。解除後にTAKが一部でも売れば、今回の募集規模に迫る供給になります。
- 目論見書のリスク項目も、池田氏の保有株が市場で売却された場合に「株式の需給バランスを緩ませ、株価形成に影響を及ぼす可能性がある」と記載しています。
- 株価が上がるほど売りやすくなる構造で、中期の上値を抑える要因です。2027年春に向けて、大量保有報告書の変更報告と、ロックアップの前倒し解除の開示に注意が必要です。
5-4. 新株予約権と取得コスト【開示】
- SOは2回分で合計805,000株です。第1回は400,000株(行使期間2023/2/23〜2031/2/22)、第2回は405,000株(同2025/12/27〜2033/12/26)で、行使価格はいずれも89円(分割後)です。行使期間の初日はどちらも到来済みで、行使には行使時点で役職員の地位にあることが条件です。ロックアップ(180日)の間は、主幹事の同意がない限り売却できません。
- 上場前2年間(2023年10月以降)の特別利害関係者間の株式移動は、すべて1株40円(株式分割後ベース)でした。移動価格は当事者間の協議で決めたと注記されています。
- 公開価格1,480円に対して、取得コストは約1/37(40円)、約1/17(SOの89円)です。ロックアップ明けの売り意欲が強い層になる可能性があります【推計】。
- 自己株式の残り(849,000株)でSOを賄えるため、行使しても発行済株式数は増えません【推計】。
5-5. OAとシンジケートカバー【開示】
- 株価が公開価格を大きく上回っているため、野村はOA分を市場で買い戻すより、11/11の第三者割当(自己株式の処分、引受価額で処分)を行使して調達するのが合理的です。行使されれば会社に約6.8億円が入ります【筆者の判断】。
- 株価が公開価格〜引受価額(1,361.6円)付近まで下がると、市場での買い戻し(シンジケートカバー)が下支えになりえます。ただしカバー期間は11/6までで、その後は支えが消えます。買い戻した分は第三者割当が失権し、会社への入金額が減ります。
6. 会計・ガバナンスリスク
- 支配構造: 上場前は池田氏グループが自己株式を除く発行済株式の88.8%でした。上場後は約45.7%(TAK+池田恭子氏)に下がりますが、筆頭株主です。池田氏は元代表取締役で、現在の代表取締役は有馬弘進氏です。目論見書は、支配株主・親族・資産管理会社との取引は行っておらず、今後も予定しないとしています。
- 経営体制: 取締役4名(うち社外2名)と執行役員2名。従業員47名(臨時68名)の少人数経営で、内部管理体制の整備が追いつくかは上場後のテーマです(リスク項目に記載)。
- 監査・会計: 太陽有限責任監査法人が適正意見です。第32期第3四半期は期中レビューです。FY28・FY29の赤字は、サブスク型への移行に伴う売上計上時期の変更によるものです。目論見書の記載の範囲では、会計処理に特異な点は確認できませんでした。
- 配当: FY31は8円(分割後)で配当性向27.1%です。FY32は8円(13.2%)、FY33は24円(配当性向26.2%)が予想です【会社計画】。1,799円での利回りはFY32 0.4%、FY33 1.3%で、配当は判断材料になりません。
- 資金使途: 手取り約13.6億円のうち、使途に挙がるのは12.5億円で、FY35までの3年間に使う計画です。現預金が厚く、資金繰りの懸念は小さいです。一方、採用・増床・販促・AI開発の費用が営業利益率にどう効くかが、FY33計画のもっとも不透明な部分です。
- 未確認事項: 11/13の決算前で、FY32通期の実績は確認できません。FY32・FY33の計画値は上場時の公表値で、目論見書本文には記載がなく、日本投資機構・トレーダーズ・ウェブなどの数字で照合しました。FY33のEPS訂正(91.73円→97.51円)の経緯は、会社の開示を直接確認できていません。ルクレ公式のIRページからは直接の開示を取得できませんでした。株価データは複数の株価サイトで照合しています。実効税率35%、非営業損益ゼロ、シナリオの確率と倍率は筆者の仮定です。
7. 株価シナリオと買い目線
7-1. 上場後の見通し【推計・筆者の判断】
| シナリオ | 株価帯 | 想定 |
|---|---|---|
| 強気 | 1,800〜2,100円 | 11/13の決算でQ4粗利率54%台を維持し、FY33計画が据え置かれる(または上方修正)。ID純増が加速し、会社計画のPER22〜25倍が通る。初日高値2,344円までは遠い |
| 中立 | 1,450〜1,700円 | 決算は計画線。需給は重く、公開価格と現値の間でもみ合う。2027/4のロックアップ解除前から上値が重くなる |
| 弱気 | 1,150〜1,400円 | Q4の粗利率が低下、またはFY33計画が据え置かれない。11/6でカバー買いが消え、引受価額(1,361.6円)を割り込む |
株価帯は、4-4の理論株価の範囲に、需給の影響を加味した筆者の判断です。
7-2. 買い目線(長期保有・ロングオンリー前提)
「損益比」は、会社計画達成・PER22倍(1,823円)までの上値余地を、悪化シナリオ・PER20倍(1,143円)までの下値余地で割った値です【推計】。
| 目線 | 価格帯(円) | 条件 | FY33F PER(会社計画EPS) | 損益比 | 加重平均(1,554円)との差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 様子見 | 1,600超 | 会社計画の満額達成でも上値余地が小さい。現値1,799円は損益比0.04 | 19.3倍超 | 0.5未満 | +3%超 |
| 打診買い | 1,480〜1,500 | 公開価格とカバー期間(〜11/6)の下支えを狙う戦術的な買い | 17.9〜18.1倍 | 0.9〜1.0 | −4〜−5% |
| 本格買い | 1,350〜1,400 | 引受価額付近。営業利益率24%想定でPER約20倍、FY33のEV/EBIT約10倍 | 16.3〜16.9倍 | 1.7〜2.3 | −10〜−13% |
| 積極買い | 1,300以下 | 需給の悪化を伴う局面。営業利益率24%想定でPER19倍以下 | 15.7倍以下 | 3.3以上 | −16%以下 |
- 現値(1,799円)は見送りです。 会社計画が満額達成されてもPER22倍で1,823円です(上値余地+1.4%)。下値の1,143円までは−36.5%あります。
- 打診買いは、バリュエーションの割安感ではなく、需給の底を狙う戦術です。 1,500円付近でも妥当株価(1,554円)に近く、損益比は約1.0にとどまります。買うなら資金の1/4程度に抑えます。
- 本格買いは1,350〜1,400円です。 加重平均から10〜13%の安全域があり、損益比は1.7〜2.3になります。資金の約1/2を充てます。
- 積極買いは1,300円以下です。 公開価格を12%以上割る局面で、損益比は3倍を超えます。ただし悪材料の有無を見極めてからにします。残りの約1/4です。
- 11/13の決算を挟むため、決算前は打診買いまでにするのが無難です。 本格買いは、Q4の粗利率とFY33計画の据置を確認してからでも遅くありません。ただし決算後に株価が先に動いて、買えなくなるリスクはあります。
- この価格に来るかは不確かです。 3営業日で22%下げたあとでも、現値は公開価格を21.6%上回っています。11/6以降は下支えがなくなりますが、決算が良ければ1,600円台で落ち着く可能性もあります。その場合は見送りで構いません。
- 決算が良ければ、買い目線を引き上げます。 Q4の粗利率が55%前後を維持し、ID純増が月3,000以上、FY33計画も据え置かれれば、加重平均は約1,640円になります。その場合の打診水準は1,550〜1,600円です。
- 売りの目安: 1,800〜1,850円(会社計画達成・PER22倍)で1/3、2,000円超(FY33 EPSの24倍超)でさらに1/3。残りはFY33計画の達成が見えてからにします。
見直しのトリガー(買い方向): Q4の粗利率が55%を維持、ID純増の加速、FY33計画の据置または上方修正、整備記録の売上寄与の立ち上がり。
見直しのトリガー(売り・撤退方向): 次のうち2つ以上が重なったとき。
- 粗利率が50%を下回って戻らない
- ID純増が月2,000を下回る
- 解約率の悪化、または定義変更による開示の後退
- FY33計画の下方修正
- ロックアップ前にTAKが想定外に売却する
8. モニタリング・チェックリスト
| 時期 | 確認項目 |
|---|---|
| 〜11/6 | シンジケートカバー期間。公開価格(1,480円)と引受価額(1,361.6円)の攻防、出来高を伴う反発の有無 |
| 11/11 | OAの第三者割当の払込。最終的な処分株数と会社への入金額(満額なら約6.8億円) |
| 11/13 | FY32決算。売上3,473・営業利益688に届くか(Q4の営業利益193超が条件、Q3並みなら上振れ)。Q4の粗利率(54%台を維持か、50%割れか)。純利益が464に届くか(税率の影響)。9月末のID数(13万前後=月3,000増ペース)と契約社数(12,600社超)。Q4のストック売上比率(40%超か)。FY33計画(売上4,177・営業利益1,212)が据え置かれるか |
| 11/18 | 決算説明会。販管費・追加投資の見通し、粗利率の持続性、成長記録のARPU、棚卸資産(端末在庫)の説明 |
| 12/25 | 定時株主総会。FY32配当8円、役員体制 |
| 2027/2中旬 | FY33 1Q決算。ID純増、ストック比率、粗利率、販管費の増え方 |
| 2027/4/12 | ロックアップ解除。TAK(3,800,000株)・役員・従業員・SO保有者の売却余地が開く。前倒し解除の開示、大量保有報告書の変更報告 |
| 2027/5中旬・8月中旬 | FY33 2Q・3Q決算。FY33計画の進捗(営業利益率の水準) |
| 随時 | 解約率・ID純増の推移、AITURBOの月間処理台数(7月760台)、成長記録のYAU・ARPU(「うちの子」有料化の貢献)、競合(施工管理SaaS)の写真管理機能の強化・無料化 |