トグルホールディングス

652A · グロース · 上場日 2026/10/30 · 公開 2026/10/21

2026/10/21時点の情報で作成しています。ブックビルディングは10/21まで、公開価格の決定は10/22です。凡例は【開示】=目論見書・届出書などの一次資料、【会社計画】=会社の業績予想、【推計】=筆者の逆算、【第三者】=IPO情報サイトの見方です。金額の単位は特記なき限り百万円です。

エグゼクティブサマリー

観点 評価 要点
成長性 ◎(計画上) 売上はFY25の123億円からFY26F 256億円、FY27F 430億円へ【会社計画】
実現確度 ✕ Q3は営業赤字。Q4にFY25通期売上に等しい売上を計上する必要がある【推計】
収益の質 △ 営業CFはFY25で−39億円、在庫急増、有利子負債が重い。SaaSは売上の約3%
バリュエーション △〜✕ PERはFY26F 29.3倍、FY27F 14.7倍。FY27を達成して初めて割安感が出る
需給 ✕〜△ 吸収金額156億円、CEOが30.7億円を売出し。一方で機関投資家の購入関心や競合IPOの少なさが下支え
ガバナンス △ 関連当事者取引、CEOの親族がCLO、特別委員会による審査あり
総合 公募は見送り寄り 買い目線は後述。計画の進捗が確認できるまでは押し目待ち

結論: 4,040円は、FY27の純利益40億円(前期比+139%)をほぼ満額で織り込んだ価格です。同業並みのPERなら2,000〜2,700円台、会社計画を100%達成して15倍まで買われてようやく4,000円台です。上場後の需給が崩れる局面で拾う戦略が合理的と見ます。

前回分析(10/15)からの変更点

項目 内容 判断への影響
仮条件 4,030〜4,040円で変わらず。想定価格を下限とする狭いレンジで、上限は想定比+0.2%【第三者】 中立。強気設定だが、仮条件の上振れではない
幹事配分 SMBC日興73.2%(2,835,700株)、UBS16.4%(635,200株)、SBI10.4%(404,000株)【第三者】 日興主幹事。UBS分は海外販売を含むため、国内の割当は小さい
機関投資家 りそなAMのファンド約22億円、Jupiter AMのファンド約28億円が購入関心を表明【第三者・要確認】 吸収金額の約3割相当。ただし関心表明は拘束力がない
ロックアップ 約92万株(上場株数の約6.2%)が公開価格の1.5倍(約6,060円)以上で解除【第三者】 前回の理解を裏づけ。上値の戦略的な重しになる
競合IPO 前後2週間に他のIPOなし【第三者】 資金分散が起きにくく、需給にはプラス
市況 不動産株が軟調、金利上昇が逆風。日経平均は直近1か月で約−1.4%【第三者】 マイナス。不動産セクターのセンチメントが弱い
第三者の評価 C(IPO株ブログ、kabu.bridge salon、IPOWIN)、D(IPO基礎知識)、B(IPOメカニック)。初値予想は3,710〜4,920円と幅がある【第三者】 割れから+20%まで割れており、コンセンサスは弱含み

初値予想アンケート(287票)では、公募割れ(4,040円未満)が59%で最多でした【第三者】。

1. ディール概要【開示】

項目 内容
市場・上場日 東証グロース、2026/10/30
日程 BB 10/15〜10/21、公開価格決定 10/22、申込 10/23〜10/28、払込 10/29
仮条件 4,030〜4,040円
公募 2,244,600株
売出 1,124,900株(うち伊藤氏760,000株、67.6%)
OA上限 505,400株
上場時発行済株数 14,762,285株(OA込15,267,685株)
潜在株式 1,954,760株
時価総額 約595億円(4,030円)/約596億円(4,040円)
吸収金額 約156.2億円/156.5億円(オファリングレシオ26.2%)
手取り概算 83.3億円+OA分18.8億円=約102億円
資金使途 M&A 80億円、人材5.3億円、借入返済16.8億円

公募比率は約66.6%(公募/(公募+売出))です。グロースの吸収金額としては大きく、時価総額の約26%が市場に出ます。

大株主(上位)【第三者(目論見書ベース)】

株主 比率
伊藤嘉盛(代表取締役) 37.96%
Funi(伊藤氏が全株保有) 34.55%
ブーストキャピタル1号投資事業有限責任組合 3.06%
SMBC信託銀行(未来創生3号ファンド) 3.05%
三鬼紘太郎 1.54%
日本郵政キャピタル1号投資事業有限責任組合 1.53%
レアゾン・ホールディングス 1.38%

CEO(直接分とFuniの合計)で約72.5%を保有しており、VCの保有比率は約14%です。比率の分母に潜在株式が含まれるかは確認できていません。売出し後のCEO実質保有比率は、分母を上場時株数と仮定すると約56%になる計算です【推計】。支配株主が残る構造のため、少数株主の発言力は限られます。

2. 財務の正常化

2-1. 実績【開示】

FY24 FY25
売上高 9,915 12,353
営業利益 538 1,138
経常利益 412 927
純利益 145 565
売上総利益率【推計】 19.5% 28.4%
営業CF – −3,922
棚卸資産の増加 – +4,496
自己資本比率 – 32.0%
EPS / BPS – 48.23円 / 157.65円
ROE – 13.7%

FY25は利益が伸びていますが、営業CFは約−39億円で、在庫を約45億円積み増しています。利益が現金化されておらず、借入で土地を仕入れる構造です。

2-2. FY26の四半期逆算

売上 営業利益 経常利益 純利益
H1(開示) 9,948 1,368 1,250 851
9M(開示) 13,179 872 674 472
Q3単独(9M−H1)【推計】 3,231 −496 −577 −379
FY26F(会社計画) 25,560 2,798 2,517 1,674
Q4必要額【推計】 12,381 1,926(15.6%) – 1,202
  • H1の営業利益率は13.7%でしたが、9Mでは6.6%に低下し、Q3単独は営業赤字です。
  • Q4に必要な売上12,381は、FY25通期の売上(12,353)とほぼ同額です。
  • 9Mの支払利息は174で、営業利益の約20%に相当します。

2-3. Q4達成度別のFY26営業利益【推計】

Q4営業利益の達成度 FY26営業利益 計画比
75% 23.2億円 83%
50% 18.3億円 66%
25% 13.5億円 48%

不動産開発は引渡しの期ズレが起きやすい業態です。Q4が計画の半分でも通期は計画比66%に留まります。IPO直後の初回決算で下振れた場合の影響は小さくありません。

2-4. 会社計画【会社計画】

FY25実績 FY26F FY27F
売上高 12,353 25,560(+107%) 43,034(+68%)
営業利益 1,138 2,798(10.9%) 6,280(14.6%)
純利益 565 1,674 4,005(+139%)
EPS 48.23円 138.09円 274.50円

配当は両期とも無配予想です。FY26の計画値は会社の業績予想PDFを直接は確認できておらず、複数のIPO情報サイトの数値で照合しています。

3. ビジネスと競争優位

  • 本質は土地仕入れ型デベロッパーです。 AIで再開発可能な土地を探し、仕入れて約6か月で回転させるモデルで、LTVは90〜100%に及びます。競争力の源泉は仕入れ力と借入余力です。
  • AIの収益寄与は小さいです。 Agentic Platformは9M売上の約3.4%にすぎません。成長ストーリーとしてのAIと、実際の収益源との間にずれがあります。
  • 参入障壁は高くありません。 仕入れ競争と資金調達力の勝負で、同業の霞ヶ関キャピタル(PER 7.6倍、PBR 2.1倍、営業利益率17%)が比較対象です。AI銘柄としてのプレミアムは、現時点の収益構造では説明しづらいです。
  • 主なリスク: 顧客集中、在庫評価損、金利上昇、4Qへの引渡し偏重。従業員は連結239人、平均勤続1.1年と組織は若く、M&Aと採用を同時に進める計画の実行リスクもあります。

4. バリュエーション

4-1. PER(4,040円)

FY25実績 FY26F FY27F
単純PER 83.8倍 29.3倍 14.7倍
IPO後株数ベース【推計】 – 35.6〜36.8倍 14.9〜15.4倍

IPOで株数が増えるため、実質のPERは単純PERより高くなります。FY27F PERは同業の7.6倍に対して約94%のプレミアムです。

4-2. PBR(IPO手取り込みのプロフォーマ)【推計】

FY26末 FY27末
4,030円 3.35倍 2.74倍
4,040円 3.14倍 2.61倍

FY27のROEは約20%の計画です。計画通りならPBR 2.6〜2.7倍は説明がつきますが、達成度が落ちるとROEも下がり、正当化は難しくなります。IPO後の自己資本比率は約55.7%に改善する見込みです。

4-3. FY27純利益の達成度×PERによる理論株価【推計】

FY27純利益40.05億円に達成度とPERを掛け、株数で割った値です(OA込15.27M株/上場時14.76M株の順、円)。

達成度 \ PER 8倍 10倍 12倍 15倍
100% 2,099〜2,170 2,623〜2,713 3,148〜3,256 3,935〜4,069
75% 1,574〜1,628 1,967〜2,035 2,361〜2,442 2,951〜3,052
50% 1,049〜1,085 1,312〜1,356 1,574〜1,628 1,967〜2,035

4,040円が正当化されるのは「計画100%達成+PER 15倍」だけです。 計画を達成したうえで、不動産デベロッパーとしては高めのPERを許容する必要があります。同業並みの8〜10倍なら、100%達成でも2,100〜2,700円台です。

5. 需給とオーバーハング

5-1. 放出量と配分

  • 吸収金額は156億円で、時価総額の約26%です。CEOが30.7億円を売出す点は需給面でネガティブです。
  • 主幹事のSMBC日興が全体の約73%(2,835,700株)を持ちます。UBS(635,200株)は海外売出し分を含むため、国内の個人向け配分は日興とSBIが中心です。
  • 当選口数は約38,749口で、個人向けは当たりやすい部類です【第三者】。人気化しにくい案件のサインとも読めます。

5-2. 機関投資家の購入関心【第三者・要確認】

りそなAMのファンド約22億円とJupiter AMのファンド約28億円が購入関心を表明したとされます。合計約50億円は吸収金額の約3割です。

  • プラスに読める点: 長期資金の需要があり、公募割れの下支えになる可能性があります。
  • 割り引く点: 関心表明は拘束力がなく、IPO後に売却されるか保有されるかは別問題です。情報源が一つで、私の側では一次資料で確認できていません。

5-3. ロックアップ

  • CEOと関連法人(Funi)は180日(2027/4/27まで)です【開示】。
  • 一部のVC・ファンド層は公開価格の1.5倍(約6,045〜6,060円)以上で解除されます。対象は約92万株(上場株数の約6.2%)で、解除時の売り圧力は約56億円相当です【第三者・推計】。

5-4. 新株予約権(SO)【開示】

行使価格 株数
26円 420,310
815円 120,070
1,120円 395,850
3,306円 255,130
小計 1,191,360(上場株数比8.1%)
CEO第14回 763,400
合計 1,954,760(13.2%)

低い行使価格のSOを持つ層は、上場後に売りに回りやすいです。3,306円のSOは、株価が3,300円を超える局面で売り圧力が増えます。

6. 会計・ガバナンスリスク

  • 財務面: 借入依存が大きく(D/E 1.46倍、6/30時点)、営業CFはマイナスです。在庫評価損が出ると利益が一気に吹き飛ぶ構造です。
  • 資金使途: 手取りの約80%(80億円)をM&Aに充てる計画ですが、案件は未定です。使途が定まらない大型調達は、資本効率の面で懸念があります。
  • ガバナンス: 関連当事者のFuniとの取引があります。CEOの妹がCLOを務めます。CEOの不動産購入は特別委員会で審査されています。CEOが実質7割超を握る支配構造です。
  • 未確認事項: 会社の業績予想PDFの直接確認、仮条件決定の取締役会開示、6/30時点の販売用不動産・有利子負債の一次確認は完了していません。

7. 株価シナリオと買い目線

7-1. 初値・上場後の見通し【推計・筆者の判断】

シナリオ 初値目安 想定
強気 4,500〜4,900円 機関需要が表面化し、日興主幹事の統計的な強さが出る。第三者の最高予想は4,920円
中立 3,900〜4,400円 公募価格付近で売り抜けたい層と、押し目買いが拮抗
弱気 3,500〜3,900円 不動産株の弱さと吸収金額の重さが出て、公募割れ

公開価格が4,040円で決まった場合、100株あたりの損益は、初値3,700円で−3.4万円、4,400円で+3.6万円、4,800円で+7.6万円です。第三者の予想は3,710〜4,920円と幅があります。前回(中立〜弱気寄り)から大きくは変えていませんが、機関投資家の購入関心と競合IPOの少なさを踏まえ、公募割れの確率はやや下げています。

7-2. 買い目線(長期保有・ロングオンリー前提)

目線 価格帯(円) 条件 FY27F PER(単純)
様子見 3,500超 計画100%でも割高感が残る 12.8倍超
打診買い 2,900〜3,100 計画75%×PER 15倍、または計画100%×PER 11〜12倍 10.6〜11.3倍
本格買い 2,400〜2,800 計画75%×PER 12倍〜、計画100%×PER 10倍 8.7〜10.2倍
積極買い 2,100〜2,300 計画75%×PER 10倍、または計画100%×PER 8倍(同業並み) 7.7〜8.4倍
  • 公募・初値での参加は見送り寄りです。 計画の高いハードルをクリアして初めて割安になる価格で、下振れ時の下値余地が大きいです。
  • 上場後に3,000円を割れば検討に入れます。 2,400〜2,800円が、リスクとリターンが釣り合う帯です。
  • 上昇が見込まれる局面: Q4の引渡しが計画通りに進み、FY27の仕入れ・受注が見えてきた場合は、PER 10〜12倍で3,000円台前半まで許容できます。
  • 注意: ロックアップ解除の条件(約6,060円)は遠く、上昇時の天井は低くなりやすい構造です。損切りはFY26通期決算でQ4が計画の半分を下回った場合を基準にします。

8. モニタリング・チェックリスト

時期 確認項目
10/22 公開価格(上限4,040円か)、需要倍率、機関投資家の実際の配分
10/30 初値、OAの動きと買い支え、売買代金
上場後〜2027年春 Q4決算:売上12,381・営業利益1,926に届くか。届かなければ計画の信頼性が大きく後退
決算ごと 営業CF、棚卸資産、有利子負債、支払利息の推移
随時 M&A案件の開示(80億円の使途)、SO行使と大株主の売却(大量保有報告書)
2027/4/27前後 ロックアップ解除。CEO・Funi以外のVC層は株価が約6,060円に届かない限り通常通りの解除
随時 関連当事者取引、特別委員会の審査内容、役員の持株変動

出典