RECEPTIONIST

660A · グロース · 上場日 2026/11/10 · 公開 2026/10/23

2026/10/23時点の情報で作成しています。仮条件は10/21に820〜850円で決定し、ブックビルディングは10/23〜10/29、公開価格の決定は10/30です。凡例は【開示】=目論見書・届出書・Ⅰの部などの一次資料、【会社計画】=会社の業績予想、【推計】=筆者の逆算・試算、【第三者】=IPO情報サイトや市況サイトの数値です。金額の単位は特記なき限り百万円、株価・1株当たりの数値は2026/7/15の10分割後の円です。出典は本文中のリンクと末尾の一覧に付けています(Ⅰの部・目論見書のページ番号はPDFのページです)。

エグゼクティブサマリー

観点 評価 要点
成長性 ○ ARRは2025/10末の929から2026/7末の1,079へ。9か月で+16.2%、年率換算+22%【開示+推計】。FY26の売上予想は1,080(+20.8%)【第三者・要確認】
成長の質 △ 契約企業数は9か月で+4.2%(2,381→2,480社)。ARRの伸びの大半はARPA(+11.5%)によるもので、既存顧客の拠点・利用者の拡大が中心
収益性 ○(見かけは◎) 9か月の営業利益率は26.7%(FY25は5.2%)。ただし、ソフトウエアの資産計上の増加(売上比+7.5pt)と人員減(62名→55名)の寄与が大きく、開発費を全額費用とみた実力は16%前後【推計】
財務・キャッシュ ○ 7月末の純現金は476。前受金397が資金繰りを支える。8/31に300を追加で借入(有利子負債は622へ)
バリュエーション ○ 850円で、EV/営業利益(FY26予想)11.2倍、税負担を正常化したPER18.7倍、EV/ARR3.0倍(いずれも希薄化後)。確率加重の1株価値は約970円
需給 △ 売出が96.6%で、VC等の保有は58.5%。90日ロックの8者62.4万株(15.4%)は公開価格の1.5倍で解除される。吸収金額はOA込み14.3億円と小型
ガバナンス・リスク △ 10/16に旧コーポレートサイトの問い合わせ情報の漏洩可能性(約1,200名)が判明し、訂正届出書で追記。2027年2月の本社移転で賃料が上がる(影響額は「精査中」)。グロース市場の時価総額100億円基準まで約2.9倍の距離
総合 公募参加は可 仮条件上限でも安全域は約12%。本格的に買うのは650〜750円

結論: 仮条件上限の850円は、FY28に売上14.7億円・営業利益率21%・EV/EBIT13倍に届く「ベースシナリオ」(約950円)の9割弱の価格です。下振れ(約490円、−43%)と上振れ(約1,580円、+86%)を確率30:45:25で加重すると約970円になり、安全域は約12%あります。受付SaaSでの首位、月次解約率0.39%、売上の94%が継続課金という土台は堅く、直近のestie(658A)のように安全域がない案件とは違います。一方で、FY26の利益率26%は開発費の資産計上と人員減で底上げされており、上場後は採用・広告・本社移転でコストが増える局面に入ります。IPOはVCの出口が主目的で、会社に入る資金は小さいです。公募での取得は可とし、長期保有として本格的に買い増すのは650〜750円の押し目とします。

1. ディール概要【開示】

項目 内容 出典
市場・上場日 東証グロース(略称G-レセプショニスト)、2026/11/10 JPX 新規上場会社概要 p.1
日程 仮条件決定10/21、BB 10/23〜10/29、公開価格決定10/30、申込11/2〜11/6、払込11/9 JPX 新規上場会社概要 p.2
仮条件 820〜850円(想定発行価格820円)。会社法上の払込金額は697円 訂正目論見書 p.2
公募 50,000株。差引手取概算は25.4(仮条件の平均835円ベース) 訂正目論見書 p.3
売出(買取引受) 1,416,200株、売出人17者 目論見書 p.29
OA 上限219,900株。貸株人は代表取締役CEOの橋本(大宮)真里子氏。SBI証券を割当先とする第三者割当(払込12/9)、シンジケートカバー取引は12/4まで 訂正目論見書 p.5
上場時発行済株式数 4,045,790株(自己株式32,380株を含む)。OA全額の割当で4,265,690株 JPX 新規上場会社概要 p.1、Ⅰの部 p.48
潜在株式 565,650株(上場前発行済株式数の14.16%) Ⅰの部 p.23
時価総額 33.2億円(820円)〜34.4億円(850円)【推計】 上場時株式数×仮条件
吸収金額 公募+売出で12.0〜12.5億円、OA込みで13.8〜14.3億円【推計】 株数×仮条件
オファリングレシオ 36.2%(OAなし)/41.7%(OA込み)【推計】 公募+売出÷上場時株式数
資金使途 手取の合計は上限194(OAの第三者割当分169を含む、835円ベース)。オフィス移転150、採用費・人件費24、広告宣伝費等20 訂正目論見書 p.3〜4
幹事 主幹事はSBI証券。引受は大和、SMBC日興、東海東京、岩井コスモ、丸三、松井、楽天、JIA、あかつき、むさし JPX 新規上場会社概要 p.2
親引け クマヒラ(既存株主・業務提携の基本合意先)に上限121,900株。180日の継続所有 訂正目論見書 p.4〜6
会社 代表取締役CEO 橋本(大宮)真里子氏。2016/1設立(旧ディライテッド)、東京都目黒区。従業員55名(2026/8末)。監査人はみおぎ監査法人。決算期は10月 JPX 新規上場会社概要 p.1、Ⅰの部 p.12

公募比率は3.4%(50,000株÷1,466,200株)で、売出が96.6%を占めます。会社に確実に入るのは公募の手取25程度で、資金使途の大半(オフィス移転150)は、OAの第三者割当(上限169)が実行されて初めて賄える設計です。上場後に株価が公開価格を割り込み、SBI証券がシンジケートカバー取引で株を買い戻した場合、第三者割当は減るか実行されません【推計】。会社は8/31に300を借り入れており、移転資金はそちらでも賄えますが、「成長資金を調達するIPO」ではありません。

2. 財務の正常化

2-1. 実績【開示】

FY24 FY25 H1 FY26 3Q単独【推計】 9M FY26
売上高 696 894(+28.5%) 519 280 800
ストック収益 665 831(+25.0%) 486 262 748
スポット収益 31 63 33 18 51
売上総利益(率) 623(89.5%) 800(89.5%) 460(88.5%) 246(87.7%) 706(88.2%)
販管費(率) 598(86.0%) 754(84.3%) 323(62.2%) 168(60.1%) 492(61.5%)
営業利益(率) 24(3.5%) 47(5.2%) 136(26.3%) 77(27.6%) 214(26.7%)
経常利益 24 45 134 73 207
純利益 28 113 133 75 209
営業CF 98 90 167 – 未作成
ソフトウエア投資(設備投資) – 35 61 36 97
現金及び預金 295 666 736 – 799
有利子負債 301 397 381 – 322
前受金 232 288 339 – 397
純資産 −226 137 253 – 329
従業員数 52名 62名 – – 55名(8月末)

出典: 経営指標はⅠの部 p.4〜5、経営成績はp.25〜26、CFはp.29、収益区分はp.30、設備投資はp.33、財務諸表はp.68〜74、3Q累計の財務諸表はp.119〜121。3Q単独は9M−H1の差し引きです。

売上総利益率は88〜89%台で安定しています。変わったのは販管費率で、84.3%から61.5%へ23pt下がりました。この急低下の中身を次の2-3で分解します。

2-2. FY26の会社予想から逆算する4Q

目論見書・届出書には業績予想が載っていません。トレーダーズ・ウェブが掲載する会社予想(売上1,080、営業利益285、経常利益275、純利益300、EPS 76.33円)を使います。一次資料で直接確認できていないため【第三者・要確認】です(トレーダーズ・ウェブ 660A)。

9M実績【開示】 FY26予想【第三者・要確認】 4Q必要額【推計】 参考: 3Q単独【推計】
売上高 800 1,080(+20.8%) 280 280
営業利益(率) 214(26.7%) 285(26.4%) 71(25.4%) 77(27.6%)
経常利益 207 275 68 73
純利益 209 300 91 75
  • 売上は保守的です。 4Qの必要額は3Qと同じ280です。7月末のMRR(ARR÷12)は約90で、ストック収益だけで3か月約270になり、スポット収益(3Qは18)を足すと4Qは285〜290程度に届く計算です。FY26の売上は1,090前後での着地が見込めます【推計】。
  • 4Qの営業利益率は25.4%に下がる想定です。 上場準備の費用などを織り込んだとみられます。
  • 純利益が経常利益を上回ります。 4Qの純利益91は経常利益68より約23多く、繰延税金資産の追加計上(税金のマイナス)を見込んでいるとみられます【推計】。会社予想のEPS 76.33円は、税金がほぼゼロの利益に基づく数字です(2-4で正常化します)。

2-3. 利益の質: 販管費率23pt低下の内訳【推計】

① ソフトウエアの資産計上が大きく増えました。

FY25 9M FY26
ソフトウエア投資(資産計上した開発費) 34.7 97.5
減価償却費 3.5 9.8
差し引き(資産計上による利益の押し上げ) 31.2(売上比3.5%) 87.6(売上比11.0%)
開発費を全額費用とみた営業利益(営業利益+償却−投資) 15.3(1.7%) 126.2(15.8%)
ソフトウエア+仮勘定の残高 35.7(2025/10末) 124.2(2026/7末)

出典: 投資額はⅠの部 p.33、減価償却費はp.73・p.86・p.122、残高はp.68・p.119。

代表電話コネクト(2025/12)、招待レセプション(2026/2)、RECEPTIONIST Agentといった新サービスの開発を資産計上しており、会計処理として不自然ではありません。ただし、資産計上の比率がFY25の3.5%から11.0%に上がったことで、営業利益率は約7.5pt押し上げられています。計上したソフトウエアは今後5年程度で償却費に変わり、利益を削ります。

② 人員と人件費が減りました。 従業員は62名(2025/10末)から55名(2026/8末)に減り、販管費の給料手当は四半期あたり80.7(FY25平均)から69.8(H1平均)へ13.5%減っています(Ⅰの部 p.4、p.12、p.86、p.111)。開発人員の人件費が資産計上に回った分(①)と、純粋な人員減の両方を含みます。FY25には展示会など広告宣伝費も抑えたと会社は説明しています(p.25)。

③ 上場後はコストが戻る方向です。 会社自身が「調達資金も活用して人材の採用及び広告宣伝等への投資を行う方針」としています(Ⅰの部 p.31)。これに本社移転(6-2)と上場維持コストが加わります。

評価: 売上の伸び(+21%)に対して人員を絞り、販管費をほぼ横ばいにした営業レバレッジは本物です。ただし26%という水準は、上場前の1年間にコストを抑えた結果も含みます。開発費を費用とみた実力ベースは16%前後で、Rule of 40も見た目の47(成長20.8%+営業利益率26.4%)に対し、実力ベースは37程度です【推計】。

2-4. 税金の正常化【開示+推計】

項目 内容
税務上の繰越欠損金 1,338(2025/10期)(Ⅰの部 p.22)
繰延税金資産 計上済み72.5。欠損金の税効果459.2のうち388.6は評価性引当額として未計上(Ⅰの部 p.103)
FY25の純利益 112.8のうち68.2は法人税等調整額(繰延税金資産の計上)によるもの(Ⅰの部 p.72)
9Mの税金 0.5(税負担はほぼゼロ)(Ⅰの部 p.121)
正常化EPS【推計】 経常利益予想275×(1−法定実効税率33.58%)÷自己株式控除後の上場時株式数4,013,410株=45.5円(会社予想EPSは76.33円)
欠損金の価値【推計】 FY26の利益で使った後も税効果で約3.7億円が残る。使い切るまで3〜4年かかるとみて、現在価値を保守的に約2.5億円とし、バリュエーションに加算
  • 見かけのPERは割安に見えすぎます。 850円の会社予想EPSベースPERは11.1倍ですが、税負担を正常化すると18.7倍です。評価性引当額が残っているため、FY27以降も繰延税金資産の追加計上で、純利益が税引前利益を上回る期が続く可能性があります(会計上の利益で、現金は増えません)。
  • 資本金1億円の壁: 現在の資本金は11百万円の中小法人です。公募とOAの第三者割当が全額実行されると、資本金は約1.15億円になり【推計】、中小法人の扱い(欠損金を所得の全額まで控除、外形標準課税の対象外)から外れる可能性があります。会社は2021〜2025年に5回、減資や準備金の取り崩しを行っており(Ⅰの部 p.42〜48)、上場後も減資で中小法人の扱いを保つ可能性があります。目論見書に予定の記載はありません。

2-5. 財務基盤【開示+推計】

項目 2026/7末
現金及び預金 799(3か月超の定期預金100を含む)
有利子負債 322(1年内44、長期278)
純現金【推計】 476(公募手取を加えると約502)
前受金 397(純現金から差し引くと79【推計】)
純資産(自己資本比率) 329(29.0%【推計】)
8/31の新規借入 商工組合中央金庫200・三井住友銀行100(3年、無担保・無保証)。借入後の有利子負債は約622【推計】

出典: Ⅰの部 p.119〜120(3Q末の貸借対照表)、p.123(借入の後発事象)。

前受金は、顧客から契約期間分の利用料を一括で受け取る契約によるものです(Ⅰの部 p.29)。営業CFを押し上げる半面、サービス提供の義務です。H1のフリーCF(営業CF−無形固定資産の取得)は約106で【推計】、資金繰りの不安はありません。8/31の借入で金利負担は増えますが、FY25の支払利息は2.6、9Mは6.5で、影響は小さいです。

3. ビジネスとKPI

3-1. KPIの推移【開示+推計】

FY21 FY22 FY23 FY24 FY25 2026/7末
ARR 221 384 561 767 929 1,079
ARR増加率 – +74.0% +46.4% +36.7% +21.1% +16.2%(9か月。年率換算+22.1%)
月次解約率(直近12か月平均) – – – 0.53% 0.56% 0.39%
契約企業数 – – – – 2,381社 2,480社
ARPA(千円) – – – – 390 435

出典: ARR・解約率・ARPAはⅠの部 p.13〜14、契約企業数はp.7。ARRは月末MRRの12倍、解約率は解約で減ったMRRの前月末MRRに対する比率です。

  • 成長率は減速後、20%台前半で落ち着きました。 ARRの伸びは+74%→+46%→+37%→+21%と下がり、直近9か月は年率換算で+22%です。
  • 伸びの源泉は既存顧客です。 9か月の契約企業数は+99社(+4.2%、年率+5.6%)で、ARPAは+11.5%(年率+15.7%)。会社は、大手企業の受注と、既存顧客の利用拠点・利用者数の拡大でARPAが上がったと説明しています(Ⅰの部 p.25)。新規顧客の獲得ペースは鈍く、成長の持続性は「大企業の拠点展開」と「クロスセル」に依存しています。
  • 解約は少ないです。 月次0.39%は年換算で約4.6%です。9か月で解約により失ったARRは約35と推計され、新規・拡大で積み上げたARRの総額は約185です【推計】。
  • 開示していないKPI: NRR(売上継続率)、製品別の売上、新規獲得社数は開示がありません。ARRのうちRECEPTIONISTが73%、その他が27%という比率だけが開示されています(Ⅰの部 p.14)。

3-2. 事業と競争優位

  • 事業: クラウド受付システム「RECEPTIONIST」を中心に、会議室管理「予約ルームズ」、日程調整「調整アポ」、電話自動応答「代表電話コネクト」(2025/12)、イベント受付「招待レセプション」(2026/2)、ノーコードのワークフロー機能「RECEPTIONIST Agent」(一部顧客に先行提供)を提供しています。単一セグメントで、売上の94%(9M)がストック収益です(Ⅰの部 p.7〜10、目論見書 p.16)。
  • 市場で首位、ただし市場は小さく分散しています。 ITRの調査で、来訪者管理システム市場(2025年度33.5億円、前年度比+22.7%、2030年度までのCAGR17.2%)の売上シェアは14.3%で1位です。首位でも14%というのは、競合が多く集約が進んでいない市場であることを意味します。会社が挙げるTAMは国内36.7万社で、クラウド受付の普及率は2.9%です(Ⅰの部 p.7)。
  • 堀は「入れ替えの面倒さ」と連携です。 iPadの受付端末、Slack・Teams等への通知、入退室管理システムとの連携、受付・会議室・日程調整の3製品の連携(特許あり)で、一度入ると外されにくい構造です。0.39%の解約率がそれを裏付けます。半面、受付アプリ単体の技術的な参入障壁は高くなく、会社自身も競争環境リスクの影響度を「大」としています(Ⅰの部 p.20)。
  • 製品の集中: FY25の売上の約68%がRECEPTIONISTです(Ⅰの部 p.20)。新製品2つは立ち上げ期で、業績への寄与はまだ見えません。
  • AIの物語は構想段階です。 「Workplace Agent」、業務受託の「Tech BPO事業」、データ活用の「DaaS事業」は、いずれも事業化を決めていない構想と明記されています(Ⅰの部 p.16)。本稿の価値評価には含めていません。
  • 販売: 直販と販売代理店の両方で売っています。売上の10%以上を占める顧客はいません(Ⅰの部 p.30)。

4. バリュエーション

4-1. 倍率【推計】

時価総額は上場時株式数(自己株式を含む)、EVと倍率は自己株式を除く株式数に新株予約権の希薄化(自己株式取得方式)を加えた株式数で計算します。純現金は7月末の476に公募手取の約25〜26を加えた約502です。

820円 850円
時価総額(上場時株式数) 33.2億円 34.4億円
希薄化による株式の増加 +32.5万株(8.1%) +33.3万株(8.3%)
EV(希薄化後) 30.6億円 31.9億円
EV/売上(FY26予想1,080) 2.8倍 3.0倍
EV/ARR(7月末1,079) 2.8倍 3.0倍
EV/営業利益(FY26予想285) 10.7倍 11.2倍
EV/正常化営業利益(204) 15.0倍 15.6倍
PER(会社予想EPS 76.33円) 10.7倍 11.1倍
PER(正常化EPS 45.5円) 18.0倍 18.7倍
PBR(BPS約88円) 9.3倍 9.6倍

正常化営業利益は、FY26予想から資産計上の上乗せ分(売上比7.5pt、2-3参照)を除いた値です。BPSは7月末の純資産に公募手取を加えて計算しました。

4-2. 上場前の取引価格との比較【開示】

時期 取引 1株価格 850円との差 出典
2020/12〜2021/4 B種優先株式(主な割当先: Aslead、グローバル・ブレイン7号) 651円 +31% Ⅰの部 p.42、p.47
2022/9〜12 C種優先株式(BIG2号、Salesforce Ventures) 684円 +24% Ⅰの部 p.47
2023/4〜6 C-1種優先株式(ダウンラウンド) 454円 +87% Ⅰの部 p.47
2025/6 D種優先株式(RJバリューPlus1号、2.5億円) 800円 +6% Ⅰの部 p.135、p.139
2025/6〜12 ファンド間の株式譲渡(存続期間満了に伴う売却など) 普通株式560円、A種600円、C-1種640円 +33〜52% Ⅰの部 p.128〜131
2026/1 自己株式取得(大和系ファンドから) 普通株式560円、A種600円 +42〜52% Ⅰの部 p.131
2026/5 第10回新株予約権の行使価格(DCF法等で算定) 560円 +52% Ⅰの部 p.135〜137
  • 2025年以降の取引は560〜800円の帯に集まっており、仮条件はその上限をやや上回る水準です。5か月前の社内評価(560円)の1.5倍ですが、その間にH1・3Qの高い利益率が確認されたことを踏まえると、説明がつく範囲です。
  • 主要VCの取得価格(第三者割当の発行価格ベース)は651〜684円で、上場時の売却は1.2〜1.3倍程度のリターンにとどまります。大和系ファンドが存続期間満了で560〜600円で手放したように、ファンドの期限が売却の動機になっている株主がいます。価格に敏感でない売り手が残る点は、需給上の注意点です【筆者の判断】。

4-3. 同業の水準【第三者】

銘柄 時価総額 売上成長率 営業利益率 予想PER PSR
rakumo(4060) 65.9億円 +26.8% 23.4% 20.7倍 3.60倍
Photosynth(4379) 76.5億円 +14.3% 6.8% 25.6倍 2.26倍
トビラシステムズ(4441) 161.3億円 +16.6% 32.0% 29.3倍 5.75倍
エイトレッド(3969) 104.1億円 +4.9% 36.1% 13.3倍 3.59倍
ヌーラボ(5033) 78.7億円 +6.8% 8.1% 16.0倍 1.79倍
RECEPTIONIST(850円) 34.4億円 +20.8%(FY26予想) 26.4%(予想)/実力16%前後 正常化18.7倍(見かけ11.1倍) 3.2倍(FY26予想)

出典: 同業5社はIPO NAVI(2026/10/5終値、会社予想EPSベース)。トレーダーズ・ウェブの参考PER(10/19時点)は、セキュア20.1倍、フォトシンス26.3倍、ノバシステム8.7倍、アイエスビー15.2倍です(トレーダーズ・ウェブ 660A)。

成長率と利益率が近いrakumo(予想PER20.7倍、PSR3.6倍)と比べると、850円の正常化PER18.7倍・PSR3.2倍はやや割安な位置です。時価総額が同業の半分以下で流動性が低い点の割引を考えると、同業並みの評価と見ます。

4-4. シナリオ別の株主価値【推計】

FY26の売上は会社予想の1,080を共通の起点にします。FY28の営業利益に出口のEV/EBIT倍率を掛けてFY27末のEVとし、割引率15%で1.2年分割り引きました。これに純現金(約502)と繰越欠損金の価値(約250)を加え、希薄化後株式数(約435万株)で割ります。

ベア(確率30%) ベース(45%) ブル(25%)
FY27売上成長率 +10% +17% +24%
FY28売上成長率 +8% +16% +22%
FY28売上高 1,283 1,466 1,634
FY28営業利益率 14% 21% 26%
FY28営業利益 180 308 425
出口EV/EBIT 9倍 13倍 17倍
(参考)税負担を正常化したPER換算 13.6倍 19.6倍 25.6倍
出口EV(FY27末) 1,617 4,002 7,222
現在価値 1,367 3,384 6,106
株主価値(純現金・欠損金込み) 2,119 4,136 6,858
1株価値(希薄化後) 488円 951円 1,578円
850円との差 −43% +12% +86%

確率加重の1株価値は約970円で、仮条件の上限850円に対する安全域は約12%です。

  • ベア: 新規獲得の鈍化が続き、ARRの伸びが10%前後に落ちる。本社移転・採用・上場コストで利益率が14%まで下がる。出口は成長の止まった小型株の水準(PER換算13倍台)。
  • ベース: ARRの伸びは16〜17%に緩やかに減速。移転コストを吸収しつつ、FY28に利益率21%(FY26予想の26%から、資産計上の上乗せが剥落する程度)。出口は同業平均並み(PER換算約20倍)。
  • ブル: 新製品とAgentのクロスセルでARPAの伸びが続き、成長率が20%台を保つ。利益率はFY26並みを維持し、出口はトビラシステムズ級の評価。
  • 純現金にはFY27末までに積み上がる営業キャッシュフローを含めていません。その分は保守的です。

4-5. 感応度(1株価値、円)【推計】

FY28の売上と利益率の組み合わせ別に、出口のEV/EBIT倍率を変えた価値です。

FY28売上/営業利益 \ EV/EBIT 8倍 10倍 12倍 13倍 15倍 17倍
1,283/180(ベア) 453 522 592 627 697 767
1,466/308(ベース) 652 772 892 951 1,071 1,191
1,634/425(ブル) 834 999 1,165 1,247 1,413 1,578

ベースの売上(1,466)で、利益率を変えた場合は次のとおりです。

FY28営業利益率 \ EV/EBIT 8倍 10倍 12倍 13倍 15倍 17倍
14% 492 572 652 692 772 852
18% 584 686 789 840 943 1,046
21% 652 772 892 951 1,071 1,191
24% 721 857 994 1,063 1,200 1,336
26% 766 914 1,063 1,137 1,285 1,433

850円が正当化されるのは、ベースの売上で「利益率21%・EV/EBIT11.3倍以上」か「利益率18%・13倍強」の組み合わせです。 利益率を14%まで落とすと、17倍の高い出口倍率がないと850円に届きません。上場後のコスト増をどこまで吸収できるかが、価値を最も大きく動かします。

5. 需給とオーバーハング

5-1. 上場時の株式の内訳【推計】

売出人・ロックアップ・株主の状況の開示を突き合わせると、上場時発行済株式4,045,790株は次のように分かれます(合計は一致します)。

区分 株数 比率
公募・売出(市場に出る株式。親引けを除く) 1,344,300 33.2%
親引け(クマヒラ。2027/5/8まで継続所有) 121,900 3.0%
180日ロック(2027/5/8まで。解除条件なし) 1,772,690 43.8%
90日ロック(2027/2/7まで。公開価格の1.5倍で解除) 624,410 15.4%
従業員保有の普通株式(3名) 110,000 2.7%
ロックアップの対象外(オーケーウェブ40,000株など) 40,110 1.0%
自己株式 32,380 0.8%
合計 4,045,790 100.0%

このほか、OAで219,900株(貸株人は代表取締役)が市場に出ます。OA込みで市場に出る株式は1,564,200株(38.7%)です。ロックアップの対象者には「当社従業員5名」が含まれますが、氏名が開示されていないため、従業員3名の普通株式がその5名に入るかは確認できません。

5-2. 売出人別【開示+推計】

売出株数は目論見書 p.29、保有株数はⅠの部 p.142〜144(新株予約権分を除く)です。売却後の株数は筆者の計算です。

売出人 保有 売出株数 売却割合 売却後 ロックアップ
BIG2号投資事業有限責任組合 528,050 343,000 65.0% 185,050 90日・1.5倍
Salesforce Ventures LLC 453,580 295,000 65.0% 158,580 90日・1.5倍
グローバル・ブレイン7号 223,660 145,000 64.8% 78,660 90日・1.5倍
トレタ 118,000 118,000 100% 0 –
RJバリューPlus1号 529,240 110,000 20.8% 419,240 180日
TVC2号 131,770 66,000 50.1% 65,770 90日・1.5倍
島田亨 57,360 57,300 99.9% 60 なし
橋本(大宮)真里子(代表取締役CEO) 594,720 50,000 8.4% 544,720 180日
ベクトル 66,000 40,000 60.6% 26,000 90日・1.5倍
De Capital 1号 66,060 33,000 50.0% 33,060 90日・1.5倍
Sail Global Limited 63,900 32,000 50.1% 31,900 90日・1.5倍
Bach Capital Special Opportunities I 31,950 31,900 99.8% 50 なし
ポーラ・オルビスHD 76,390 31,000 40.6% 45,390 90日・1.5倍
濱渦伸次 27,000 27,000 100% 0 –
浅田慎二 20,000 20,000 100% 0 –
本間紀幸 30,000 15,000 50.0% 15,000 180日
村島健介 4,000 2,000 50.0% 2,000 180日
合計 1,416,200
  • 主要VCは保有の約65%を売ります。 BIG2号・Salesforce Ventures・グローバル・ブレインは売出後も合計422,290株(10.4%)を持ち、90日後、または公開価格の1.5倍以上で売却できます。
  • 創業時からの株主トレタは全株を売ります。 2016年に受付アプリ「Kitayon」の知的財産を現物出資した会社です(Ⅰの部 p.6)。
  • 創業者の保有比率は低めです。 代表取締役の売出後の保有は544,720株(13.5%)で、同じ姓の大宮彩央氏(100,000株、180日ロック)を加えても約16%です【推計】。創業者の支配力が弱い分、大株主VCの動向が株価に効きやすい構造です。

5-3. 親引け【開示】

項目 内容
親引け先 クマヒラ(金融機関向け設備、入退室管理システム、金庫設備などのトータルセキュリティ企業。クマヒラ・ホールディングスの100%子会社)
株数 上限121,900株(850円で約1.04億円、公募+売出の8.3%)
関係 既存株主(55,000株)で、業務提携に関する基本合意の締結先
保有方針 長期保有の見込み。払込期日から2027/5/8まで継続所有
親引け後 176,900株(3.86%)で上位4位の株主に

出典: 訂正目論見書 p.4〜7。入退室管理を手がける企業の出資と提携は、オフィスの物理接点を広げる会社の戦略と合っています。需要の質を高める材料です。

5-4. ロックアップ【開示】

ロックアップの内容は目論見書 p.34〜35(募集又は売出しに関する特別記載事項 3.)によります。

対象 期間 解除条件
橋本(大宮)真里子、RJバリューPlus1号、本間紀幸、村島健介、大宮彩央、トレイダーズFinTech1号、JIA2号、川村卓哉(取締役CFO)、クマヒラ、スパークル1号、三菱UFJキャピタル10号、Boundy、海老根智仁、長南伸明、プショニ、小原聖誉、DE-SIGNキャピタル1号、光本勇介、那珂通雅、ナツゾラ、長谷部潤、猪木俊宏、濱野智章、榮井徹、石倉壱彦、山口敬之、神田康弘、藤川真一、小笠原治、坂下尚弥、持田大輔、従業員5名 2027/5/8まで(上場日から180日) なし
BIG2号、Salesforce Ventures、グローバル・ブレイン7号、TVC2号、ポーラ・オルビスHD、De Capital 1号、ベクトル、Sail Global 2027/2/7まで(90日) 売却価格が発行価格の1.5倍以上で、主幹事経由の取引所売却
当社 2027/5/8まで 新株発行の制限(ストックオプション等は除く)
  • 主幹事は、裁量でロックアップの全部または一部を解除できます。
  • 1.5倍の解除価格は上値の壁です。 仮条件では1,230〜1,275円です。この価格以上では90日ロックの624,410株(15.4%、850円換算で約5.3億円)が売却可能になります。上場直後の吸収金額(OA込み14.3億円)に比べて、無視できない量です【筆者の判断】。
  • RJバリューPlus1号が2025/6に取得したD種優先株式は、取引所規則による継続所有の確約(上場日以後6か月まで)もかかっています(Ⅰの部 p.137)。

5-5. 新株予約権【開示+推計】

回 株数(2026/9末) 行使価格 行使開始 850円でのインザマネー
第8回 211,250 167円 2025/11/22 ○
第9回 93,500 174円 2026/9/26 ○
第10回 260,900 560円 2028/5/27 ○(行使は2028年以降)
合計 565,650 上場前発行済株式数の14.16%

出典: Ⅰの部 p.35〜40、割当先はp.139〜141。

  • 上場直後から行使できる安価な新株予約権が30.5万株(7.5%)あります。 行使価格は167〜174円で、850円なら1株あたり約680円の利益です。割当先の内訳から、役員の分は72,500株(180日ロックの対象)、従業員の分は約232,250株と推計されます。従業員のロックアップ対象は5名だけで、残りの従業員分は行使・売却の制限が目論見書上は見当たりません。新株予約権付与契約の行使条件(時期・数量の制限)は開示されていません。
  • 第10回(560円、2026/5付与)は2028/5まで行使できず、当面の需給には影響しません。

5-6. 第三者の評価と初値予想【第三者】

情報源 評価・予想
IPO基礎知識 総合評価C、初値予想900〜1,230円(10/6、仮条件前)。成長性◎、割安性△
kabu.bridge salon 評価C(1.0倍以上1.3倍未満=820〜1,065円)。小型の吸収金額と増収増益を評価、VC保有率58.5%とオファリングレシオ41.7%を懸念(10/22)
トレーダーズ・ウェブ 注目度B(初値予想は会員限定)
IPO NAVI 数値予想なし。実績PER26.9倍(820円、FY25 EPS基準)、PSR3.71倍と算出

初値予想の上限は1,065〜1,230円で、公開価格の1.5倍(1,230〜1,275円)の手前に集まっています。強気一辺倒の予想はありません。

6. 会計・ガバナンスリスク

6-1. 情報漏洩の可能性(10/22の訂正で追記)【開示】

  • 2026/10/16、旧コーポレートサイトの制作・運用に使っていた外部サービスの提供事業者から、同社のクラウド環境に不正アクセスがあったとの報告を受けました。2024/3/13〜2026/10/5に問い合わせフォームから送られた情報(会社名、氏名、メールアドレス、電話番号、問い合わせ内容。延べ約1,600件、約1,200名)が漏洩した可能性があります(訂正目論見書 p.8、Ⅰの部の訂正報告書)。
  • RECEPTIONISTなどのサービス本体への不正アクセスは確認されておらず、アカウント情報・来訪者情報・予約情報は対象外です。会社は個人情報保護委員会に速報を提出し、リスクの発生可能性を「低」から「中」に引き上げました。
  • 評価: 直接の損失は小さいと見ます。ただし、来訪者の個人情報を預かる受付SaaSにとって、セキュリティは購買判断の中心です。大企業の情報システム部門の審査で不利になる可能性があり、今後の解約率と新規獲得の推移で影響を確認する必要があります【筆者の判断】。

6-2. 本社移転と固定費の増加【開示+推計】

  • 新本社は渋谷インフォスタワー8階で、2027年2月に移転予定です。内部造作等の設備投資110、敷金の純増35.5、引越費用等4.5を見込みます(Ⅰの部 p.33、訂正目論見書 p.3)。
  • 現本社の年間賃借料は28.7です。新本社の賃料は開示がなく、業績への影響は「精査中」とされています(Ⅰの部 p.112)。
  • 現本社は定期建物賃貸借で、契約は2027/7/31に終わります。2月に移転すると、最大で約6か月分(約14)の賃料が二重にかかる可能性があります【推計】。
  • 感応度: 賃料が年30増えるごとに、FY27の営業利益率はベースの売上(1,264)に対して約2.4pt下がります。造作110を10年で償却すると年11です【推計】。

6-3. 上場維持基準【開示】

グロース市場では2030/3/1以降、上場5年経過後に時価総額100億円以上が上場維持の基準になります。会社は、想定時価総額がこの基準を下回っており、2032/10期末以降に影響する可能性があると記載しています(Ⅰの部 p.23)。850円の時価総額34.4億円からは約2.9倍、年率で約20%の上昇が必要です【推計】。成長が鈍れば、M&Aや非公開化の選択肢が意識される局面もあり得ます【筆者の判断】。

6-4. その他

  • 代表者への依存と小規模組織: 代表取締役への依存、取締役4名・従業員55名の小規模組織を、会社自身がリスクに挙げています(Ⅰの部 p.21)。取締役4名のうち社外取締役2名は独立役員です(コーポレート・ガバナンス報告書)。
  • 外部サービスへの依存: SlackやMicrosoft Teams等への通知、カレンダー連携など、外部サービスのAPIに依存しています。規約変更で機能が提供できなくなるリスクを会社は「発生可能性: 中」としています(Ⅰの部 p.20)。
  • VC等の売却: VC等の保有比率58.5%による需給悪化を、会社は「発生可能性: 高」としています(Ⅰの部 p.23)。
  • 配当: 創業以来無配で、当面は内部留保を優先します(Ⅰの部 p.23)。

7. 株価シナリオと買い目線

7-1. 初値・上場後の見通し【推計・筆者の判断】

シナリオ 初値目安 想定
強気 1,100〜1,275円 吸収金額14億円の小型案件で、黒字SaaS・見かけの予想PER11倍が評価される。1.5倍の1,275円(公開価格850円の場合)でVCのロックが外れ、そこが上値の壁
中立 950〜1,100円 当選者の利益確定と、利益成長を評価した押し目買いが拮抗
弱気 820〜950円 売出96.6%・VCの出口案件であることと、漏洩の追記が嫌気される。OA(約1.87億円)の買い支えがあり、公開価格を大きく割り込む可能性は低い

公開価格が850円で決まった場合、100株あたりの損益は、初値800円で−5,000円、900円で+5,000円、1,000円で+1.5万円、1,100円で+2.5万円、1,275円で+4.25万円です。初値の上値は1.5倍の手前、下値はOAの買い支えで限定的と見ます。ただし、これは初値の話で、上場後の中期の価格形成(90日・180日のロック明け、12月の決算)とは別です。

7-2. 買い目線(長期保有・ロングオンリー前提)

安全域は確率加重の1株価値(約970円)に対する割安度、EV/営業利益は希薄化後のEVとFY26予想の営業利益285、正常化PERは正常化EPS 45.5円で計算しています【推計】。

目線 価格帯(円) 安全域 EV/営業利益 正常化PER 条件
様子見 1,000超 なし 13.6倍超 22倍超 ベースの価値(951円)を上回る。ブル寄りの前提が必要
打診買い(公募を含む) 800〜900 7〜17% 10.4〜12.0倍 17.6〜19.8倍 公開価格近辺。確率加重の価値の83〜93%
本格買い 650〜750 23〜33% 8.0〜9.6倍 14.3〜16.5倍 ベースの売上で出口EV/EBIT8〜10倍(652〜772円)の水準
積極買い 500〜580 40〜48% 5.6〜6.9倍 11.0〜12.7倍 ベア(488円)付近。成長の鈍化と移転コストをほぼ織り込んだ水準
  • 公募での取得は可です。 上限850円でも安全域が約12%あり、下振れ(−43%)より上振れ(+86%)が大きい非対称性があります。初値も公開価格を大きく割り込みにくい需給です。
  • 初値で1,000円を超えて買う理由は薄いです。 1,000円はベースの価値(951円)を上回り、1.5倍の解除価格(1,230〜1,275円)まで上値の余地も限られます。
  • 本格的に買うのは650〜750円です。 90日ロック明け(2027/2/7)や180日ロック明け(2027/5/8)の前後、または本社移転のコストが表面化するFY27の決算で押した局面を待つのが合理的です。
  • 引き上げる条件: 12月のFY26決算で売上1,080・営業利益285を上回り、FY27の計画で売上+18%以上と営業利益率20%以上(移転コスト込み)を示し、契約企業数の伸びが年+8%以上に戻る場合は、ベースの確度が上がります。その場合は打診帯の上限を950円まで引き上げられます。
  • 見直しの基準: FY27の計画で営業利益率が15%を下回る、ARRの伸びが年15%を割る、月次解約率が0.6%を超える、漏洩の二次被害や解約増が出る、のいずれかが起きた場合は、買い目線を一段下げます。

8. モニタリング・チェックリスト

時期 確認項目
10/30 公開価格(上限850円か)、需要の強さ、親引けの確定株数
11/10 初値、売買代金、1.5倍(1,230〜1,275円)に対する位置
〜12/4 シンジケートカバー取引の有無。OAの第三者割当(12/9払込)が実行されれば手取が最大約1.7億円増え、資本金は約1.15億円になる
12月中旬(日程は未開示) FY26決算: 売上1,080・営業利益285の達成度、ARR・解約率・契約企業数・ARPA、FY27の計画(移転コスト・採用・広告の織り込み方)、成長可能性資料でのNRR等の追加開示
2027年1月 定時株主総会(本店移転の定款変更、減資議案の有無)
2027年2月 本社移転。新賃料と旧本社(2027/7/31まで)の二重負担の規模
2027/2/7 90日ロック明け: VC・事業会社8者の624,410株(15.4%)
随時 情報漏洩の調査結果・二次被害の有無、大株主VCの大量保有報告書(変更報告)、従業員の新株予約権の行使
2027/5/8 180日ロック明け: 代表取締役・RJバリューPlus1号など1,772,690株(43.8%)と親引け分121,900株。会社の新株発行制限も同日まで
2028/5/27〜 第10回新株予約権(260,900株、行使価格560円)の行使開始
2032/10期末〜 グロース市場の上場維持基準(時価総額100億円)の適用

確認できていない事項

  • FY26の会社予想は、目論見書・届出書に記載がなく、トレーダーズ・ウェブの数値のみで確認しています。
  • 10/22の訂正届出書はEDINETの原本ではなく、同じ内容を収めた松井証券掲載の訂正目論見書で確認しました。
  • 公開価格、幹事別の配分株数、親引けの確定株数は未定です(10/30に決定)。
  • 契約企業数・ARPAは2025/10末と2026/7末しか開示がなく、それ以前の推移と新規獲得社数は分かりません。NRRと製品別の売上も開示がありません。
  • 新本社の賃料、ロックアップ対象の従業員5名の内訳、新株予約権付与契約の行使条件、上場後の減資の予定は開示がありません。
  • 同業比較は第三者サイトの数値(10/5終値、10/19時点)によるもので、網羅的ではありません。

出典